スイスワインの魅力
◾️スイスでワイン造ってるの?◾️
かなりのワイン好きの方でもスイスでワインが造られていることをご存知の方はそう多くないでしょう。
それもそのはず、スイスで醸造されたワインのほぼ全量がスイス国内で消費され、国外に出回ることがないからなのです。(輸出はわずか1.3%、日本にはわずか0.1%しか輸入されていません)
人口約857万人の九州と同じくらいの小さな国土の26全州でワイン造りが行われ、年間生産量は1億リットル、1,500以上のワイナリーがあります。
日本には酒蔵が1,400以上あると言われています。ワイナリー(酒蔵)を人口比率に換算すると、スイスは日本の10倍ものワイナリーがあるのです(スイスは8人に1つのワイナリー、日本は85人に1つの酒蔵)。
◾️スイスワインの歴史◾️
紀元前3000年には既にぶどうが存在しており、その当時からワインが生産されていたと推測されます。
一般的には古代ローマ人がワイン生産をもたらしたと言われており、2,000年以上ワインを造っている歴史があります。
中世にはブルゴーニュからシトー会の修道士がやって来て急斜面を切り開き、棚畑を作り、何キロにもおよぶ壁を作るなどワイン造りの伝統を築き上げました。(棚畑や壁は今でも残っています)
◾️スイスのぶどう畑と産地◾️
スイス全土でワインが造られており、九州とほぼ同じ広さの国土(41,285㎢)のうち約15,000ha(150㎢)をぶどう畑が占めています(国土の約0.4%)。
15,000haという数字はフランスのワイン産地の一つであるアルザスとほぼ同じ、ブルゴーニュの約半分です。
主な産地と生産量の割合は、ローヌ川畔のヴァレー州35%、レマン湖畔のヴォー州26%、ジュネーブ州9%、ティチーノ州6%、ドイツ語圏のグラウビュンデン 州やバーゼル地方などが残り20%を占めます。
ヴォー州のラヴォー地区にあるぶどう畑はユネスコの世界遺産にも指定されているほどの美しい景観を誇ります。
また、ヴァレー州のヴィスペルターミネンにはヨーロッパで最も標高の高い場所にある(標高1,150m)ぶどう畑があります。
◾️スイスのぶどう品種◾️
スイスでは250種類以上の品種が栽培されており、シャルドネやピノ・ノワールといった国際品種はもちろん、他の国ではほとんど栽培されていない約80種のスイスの固有品種があります。
また、バイオテクノロジーの先進国であるスイスでは様々な品種改良が行われています。
主な品種は白ではシャスラ(全生産量の27%)で、赤はピノ・ノワール(全生産量の29%)です。
固有品種としてはプティット・アルヴィン(白)、ウマーニュ・ブランシュ(白)、ウマーニュ・ルージュ(赤)、コルナラン(赤)、ガマレ(赤)、ガラノワール(赤)など、おそらく初めて聞かれるようなぶどう品種が栽培されています。
珍しい品種をいろいろ試し、オンリーワンの味わいを楽しむのも醍醐味のひとつです。
◾️スイスワインって高いの?◾️
よく言われるのが「スイスワインは高い」です。
ほんとうにそうでしょうか?
ぶどうの品質を高めるために収量を抑え、手作業で収穫、選果し、酸化防止剤の使用も最低限にしているため、ひと手間もふた手間もかけて造られたワインが安いわけがありません。
しかし、数字だけからみた「値段」ではなく「価値」を考慮するとどうでしょうか。
ワイン生産者で元スイスワイン推進協会長のGilles Bessseはこう言っています。
「安いスイスワインは高い、高いスイスワインは安い」
高品質のスイスワインを他国の同等のワインと比較すれば、スイスワインは本当の意味でコストパフォーマンスが高いワインであるといえるでしょう。
◾️魅力の宝庫スイスワイン◾️
ずばりその「美味しさ」がスイスワインの魅力です。
しかし、美味しいワインはワイン産出国ならどこにでもあります。
スイスワインの最大の魅力はオンリーワンの味わいです。
フランスやイタリアといったワイン大国ではほとんど栽培されていないぶどう品種を使い、それらワイン大国に遜色のないエレガントさや、深い味わいのワインが多く造られています。
通常赤ワインを造るメルロ種を使って白ワインを造っているのもオンリーワンの味わいの代表的な例といえます。
また、多様性もスイスワインの魅力の一つです。
小さな国であるにもかかわらず4つの公用語(ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語)が話されている文化的にも多様な国です。
アルプス、川や湖によってもたらされる自然条件も様々であり、ワインも多様な品種から造られ、味わいもバラエティに富んでいます。
希少価値もスイスワインの魅力といえます。
冒頭お伝えした通り、そのほとんどが国外に出回らないため、多くの方がその存在をご存知なかったり、味わったことがないという希少性もワインマニアの心をくすぐるのではないでしょうか。
「食通が最後に辿り着くワイン」といわれるスイスワインをぜひお楽しみください。